アーリースプリング・デイ
朧月夜

  恐竜の骨のようなもの、を、みたいな、
           探していたんだと、
                 思う。
          でも、そんなものは、
           どこにもなくって、
                 ただ、
 巻き貝とか、三葉虫とか、アンモナイト、
           みたいなやつだけ、
               胸の中に、
             転がっていた。
                せめて、
         始祖鳥の痕跡くらいは、
       あっても良いのに、と思い、
    思いは小春日和のような、2月の、
            日ざしに向かう。
              精霊たちは、
              歌い続けて、
              踊りあかす、
               その幸福。
誰も助けて、なんて、言ってないでしょう?
  まだ、人間に、なりきれていないんだ、
                きっと、
                  と、
           誰かの顔も見ずに、
               つぶやく。
           小春日和のようで、
           小春日和ではない。
                だって、
  風の中には、梅の香りが混じっている。
                やがて、
            春に圧迫されて、
        桜の香りに、支配される。
                 前の、
            一瞬だけの季節。
              心のなかに、
          釘さしていたものが、
     誰かによって、引き抜かれても、
             ただ、笑って、
              耐えている、
                 日々。
    明日もどうせ、曇りなのでしょう?
          意地の悪い神さまが、
             わたしたちを、
     困らせようとしているのだ、と、
              知っている。
              知っている、
                 から、
              今日だけは、
           哺乳類、のような、
         顔をしていようかしら?
               優しさは、
                とうに、
            忘れてしまった。
               悲しさは、
                とうに、
           なくしてしまった。
          まるで、トランプの、
         ジョーカーみたいって、
            噂話に聞いたよ。
            聞かせてみてよ、
         いやな人間なのだって。
               心の中の、
                 楔を、
          負いきれるのならば。
  今日だけは、哺乳類のような息をして、
         隠れ潜んでいよう、ね。
          何を探していたのか、
             忘れても、さ。
         パセティックな、記憶。
               誰にでも、
                あると、
             聞いているよ。
                だから、
             慰めはしない。
              ただそれが、
    いつかは、甘い思い出になるのを、
            知っているから。
            泣かないで、ね。
             身近な場所に、
              死があって、
       キリギリスはあれほど皆を、
       楽しませたのに、卑怯よね、
               人生って。
           キリギリスだから、
          人生とは言わないか。
               わたしも、
          人生とは言わないか。
                鰐の頭、
          誰かが食べ残したの。
         まだ、心の中にあった。
    遠い、遠い、遠い、記憶のなかで、
             無くしたもの。
             落としたもの。
             損なったもの。


自由詩 アーリースプリング・デイ Copyright 朧月夜 2020-02-03 14:15:10
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