白木蓮
蒼木りん

見惚れていたんだよ

裸木の中に

白く膨らむ木蓮

白い

木蓮


こんなにくたくたなのに

許してくれないんだ

誰も

彼も

私の奥も


唯一人の場所をして

涙の雨に濡れてみたいけれど

さて

何を肴に泣こうか

しらけた味で


自分の為から始まった

恋だけれど

いつの間にか

ただ私だけを見る

あなただけを求めた


地面にこぼした涙は

日に照らされて空に昇った

だからなのか

よく空を見るよ

なにも映らないのに


戦うことで

何か変わるなら

それも近道かもしれないけれど

私それすら気がつかず

通り過ぎるのを待つよ


木蓮が咲いたよ

桜が咲いたよ

まだ

野の花も咲きはじめだというのに

いっぺんに散るんだ


私はまだ

冬の皮を脱げないでいるのに

そうやって

おいてきぼり

無邪気さを失くしたから


名前なんて

いらないものでいたいなんて

親不孝で

ごめんなさい

名に恥じることばかり


覚えたことは

たくさんあるような

ないような

君が話さないものでよかった

目の無いものでよかった


時とは

速きもの

苦しさとは

長きもの

命とは

短きもの

自分とは

気づかぬもの


いまは

白木蓮





未詩・独白 白木蓮 Copyright 蒼木りん 2005-04-08 23:56:17
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