フラグメンツ カタログNo.31~60
AB(なかほど)




31
そのときはじめて
おじいの顔つき変わって
おかえりいいうた気がした


32
なあんお前
それぐらいのボルト交換もでけへんのか
飯は喰ったんかいな


33
今、命を削って求め続けている物も
このわずかな温もりと光ほどに
真実に近いものであれと願う


34
まごころの下取りもやってますよ
でもこの頃 高くは売れないんだよねえ
一生もんなのに


35
帰りに給湯室を覗くと
割れているのは私の湯飲みで
ちょっとだけ救われた


36
まだここで生きてる
それでいい って
こないだ親方が漏らしてた


37
美味いから食べてみろなどと
もう一度言ってみる
美味いから


38
いや
とつぶやくようにふるえ
夕焼け


39
立ち上がると風吹いた
ああ お天道様お天道様
僕にはどうにも足りないのです


40
その顔を見たくてホルモン屋
ちょいとそこまで行く先は
桜公園ホルモン屋


41
やしが真実や            
真実や               
曲ぎららんしぇえ          


42
僕の家はもう県立病院の近くではありませんが
どうか朝まで
その音を消すものがありませんようにと


43
げんまい
きらい
ってまた誰か


44
まだまだ
そらはそらで
そらはそらで


45

閉じた瞳の向こうにも



46
千にも万にも散ってゆかんかなあ
千切れてこそ見える花もあるげん
千切れてこそ見せる花もあるげん


47
遅れて公園の方からやってくる
夕陽に眩しそうな笑い顔
そうか、もうお家に帰ろうか


48
こんちきしょうって
練り込んでやろうかって
甘いばかりが美味じゃない


49
いつものとおりだと泣いてしまうので
美味しいお菓子の作り方で
カレーを作る


50
三つの穴を覘く

そこから生まれた世界が見える


51
サトウキビの畑の中を
夕陽が射していて
影が大きく落ちた


52
歌うために作られた口が開きっぱなしだ
これからギターケース広げるから
一緒に歌ってみるか


53
ああ、やっばりからい
廃線に 祭の灯 潮の風
からい


54
君を忘れようとすることと
忘れられないと思うことは
キルクルからのかけがえのない風


55
マシンガンなみの活きの良さでえ
と言いながら
いまでも娘の帰りを待っている


56
でいない愛をうらんでいない恋をうらんでいな
い人をうらんでいない親をうらんでいない君も
うらんでいない誰もうらんでいないとして君は


57
四畳半の部屋はとんでもなく小さくなって
あれ以来だよ君に会うなんて
って見ている側から食べるなよ


57-補
すっかり大きくなった君にも
今夜のこの部屋はとても広いからね 
今日も不味いや


58
そして
こおろぎは一晩中鳴き続けた
鳴き続けてくれた


59
あんたもやるのかやらんのか
ぐーじゃなくてもやってみる
ぐーでぐーって


60
あぜ道 道草 帰り道
生まれくるもの帰り道
生まれゆくもの帰り道








自由詩 フラグメンツ カタログNo.31~60 Copyright AB(なかほど) 2020-01-13 08:35:12
notebook Home 戻る