魚(いお)のように
朧月夜
海のように、そこに沈んでいく。でも今は、閉ざされている。……の多い、手紙のように。遮絶するそれらは、わたしたちを人であらしめるもの。──神? でもなく、天でもない。(わたしたちには見えないのだろう、……の時まで。その時までは、唱歌や独唱のうちに織り込まれている。そうだろうか? 徐々に足を延ばす、徐々に手を伸ばす)
花のように、それらはかぐわしい。でも昨日なら、それは遥かの果てにあったかもしれない。一つ一つの独唱が和声となる、不思議な世界。わたしもそこに在っただろうか、それとも部外に取り残されていたのか。(夕日を見るときの、澄んだ眼。あれは黄泉の郷を示す方角だそうだ。わたしたちは西から生まれ、東へと逃れ行く。かぎろい……は、西に)
本当であれば、ここも真実の国。我らの眼房に、それは折り畳まれている。明日呼ぶ声に引きずられて、わたしたちは生きている。(神話に答えを求めるのは、愚劣だ。なぜなら、そこには『それら』以上の真実はないのだから。過去は、わたしたちを生んだ母なるものでもあり、母なるものでもない。ただの奇跡として、そこに留まっている。……だからこそ、黄泉と言う)
星のように、いくつかの答えは散らばっている。しかし、いくつかの答えは待たなければならない。わたしたちを引き留める鎖があるから。その鎖は一糸の慈しみの糸には変わらない。『永遠』に、つなぎとめる鎖だ。(唱歌は、わたしたちそのもの……が、我らが底深くまでかい潜っていく時、鎖は我らを傷つけるだろう。痛みを生み出すための、鎖でもある……)
草のように、ただ靡くが良いのだ。月明かりに照らされて、我らがただあったように。時には浮かび上がり、時には沈み込み、ただたゆたうように。わたしたちが在る場所で。(そこに、答えなどを求めてはいけない……わたしたちの形をなくすのだから。時には夢み、時には泣き、時には笑い、時には愁しみ、時には狂い。果てまで行くのが良い……の、果てまで。わたしたちの多くが戻っていくように。魚のように)