あの汽笛が耳から離れない
ふじりゅう

零れる優しさの水滴に刺さる
雪風が頬を伝う
最後の嘘を纏った電車の発車音が
膝を殺める
指先が溶けそうな
熱風を吐き出す
初めて素直になれる恋を見つけていた
私と君の
一度きりの絶望の中で

全ての煩わしさに蓋をする
君の臆病な声は
凍えそうな そして倒れそうな
気が狂いそうな静かな部屋に置かれた黒電話から
ん、。なんていう囁きから始まっていた

優しいまつげの揺れる君へ逃げられないから
雪をかぶったオオカミになる
どこかの繁華街で
若草色の吐息が溢れている
君はもう雪を浴びない
どこかで草臥れているだけの生物
零れる優しさの水滴に刺さる
雪風が頬を伝う
最後の嘘を纏った私と君と
私が
初めて素直になれる恋を見つけていた
一度きりの絶望の中で


自由詩 あの汽笛が耳から離れない Copyright ふじりゅう 2019-12-19 17:00:09
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