無題
おぼろん

一つの手がわたしたちに所属する。
ありふれた闇のなかで。

わたしたちはレベリオンを目指して、
レボリューションを目指さない。

哲学者や詩人のようには、
決して語り得ないわたしたちの抵抗。

あなたの顔は青ざめて、
時に涙を流しながらも沈黙するだろう、

わたしたちに所属するのはいつだって、
この寡黙な一本の手だけなのだと。

昼間にも星が見えると言えば、
あなたたちの誰もが信じないのだろうか。

しかし、昼間にも星は見えているのだ、
わたしたちの眼眸に。それが一つの抵抗。

一つの手だけがわたしたちに所属する。
語り得ない闇を払って。

詩人よ、哲学者よ、お前たちは語り得たのか、
この青空の中にさまよう星を。

政治家よ、弁舌家よ、お前たちは例え得たのか、
この苦しみの相貌を。

「我らの人生」とわたしたちは言う、
てんでばらばらな夢の中で。

そこには希望も誇りも、ただのがらくたのように、
目覚めを待ちながら横たわっている。

「我らの世界よ」とわたしたちは言う、
わたしたちだけに所属する一つの手を抱えて、

そして膝に当てられた手は、
ただ無聊を慰めるようにゆっくりとそこをさする。

わたしたちはレベリオンを目指して、
レボリューションを目指さない。

真昼の星がいつかわたしたちの瞳の中にある間は、
わたしたちはレボリューションを目指さない。

ああ、

「世界を進歩させよ」と、詩人は言う。
「世界を発明せよ」と、政治家は言う。

でも、そんな魔法がわたしたちの手にはあったのだろうか。
わたしたちがただ沈黙の中で見る夢が……

 ……誰も見ないだろう、その夢を。
 誰も夢見ることの出来ない、その夢を。

ああ、

わたしたちに多くを与えるな、
それはわたしたちの手には余るのだから。

わたしたちから多くを奪うな。
わたしたちには片輪なこの一本の腕しかないのだから。

わたしたちに多く歌いかけるな。
真昼の星空を見ることがなかった詩人よ。

わたしたちに多くを語りかけるな。
形ある夢を与えることがなかった弁舌家よ。

哲学者や詩人のようには、
決して語り得ないわたしたちの抵抗。

青空から降る光が、
誰かの涙のように思えるわたしたちの抵抗。

時間の狭間に、ただわたしたちは在った。
閉ざされた空隙のなかに、ただわたしたちは生きていた。


[ ミレーヌ・ファルメール "Réveiller le monde"によせて ]


自由詩 無題 Copyright おぼろん 2019-12-16 20:15:59
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