暗渠
むぎのようこ



こなごなに割れた硝子片の
うえをあるいた
つま先立ちの空はおちて
抱卵する胸を
さらしてかえらない言葉だけ
ひろいあつめている
やわらかな化粧と
乳くさい部屋と猫足
揃えられた髪がさらさらと
肩からこぼれて
よるにとけた
存在するあいまをしずかに
綴じて
おおった雪のしたに
いちめんの
黒い地面を焼きながら
そっと進行する
春も
すきとおった水になるときに
もういちど瞼にふれる
ながれになる







自由詩 暗渠 Copyright むぎのようこ 2019-12-15 01:24:30
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