むすび はばたき
木立 悟






けしてかつてのものではなく
これからのこれからの願いが灯り
指の仮面を着けては外し
まぶしさにまぶしさに涙する


紙の鳥が歩む
雪と葉と楽譜
木陰で歌う誰か
曇間をすぎる舟


ひとりからひとりへ歩むもの
何処かへ何かを忘れたもの
それさえやがて忘れるもの
ひとり眠りに落ちるもの


耳になりかけた耳
左右非対称の目くばせ
陽の光に色褪せた
原野のなかに立ち止まる風


冬の雨上がり
顔の半分が羽の子と
身体の半分が鉱の子が並び
水たまりの底の器を見ている


それを得たのか
得たと思うのか
瞬時にあらゆる場所に在るものは
火とまばたきと 昇る背を見る


かすれてしまった
鉛の針で書いた言葉は 去ってしまった
それでも読みつづけ 刻みつづける
(紙の鳥の群れ 紙の鳥の群れ)


成し得たか
お前は謎になれたのか
羽と鉱の子は手をつなぎ
風の原に微笑んでいる




















自由詩 むすび はばたき Copyright 木立 悟 2019-12-13 21:57:16
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