892,800秒
竜門勇気

心になにか一つ棘が
はえていたとして
匂いのする街角が
無力になったりする日がある

今日はその日だってことにする
朝の四時過ぎに
駐車場で目をつぶって
何かを待ってた
明日は誰にも平等に訪れはした
それは君が持ってる権利だ

過去のどこかに
ピカピカのアンカーが合って
そこにくくられたロープをたどって
何度も君に会いに行った

君は窓を開けてこっちを見て笑う
朝の四時過ぎに
駐車場で目をつぶって
夢を見ていた
明日はぼくにも訪れていた
それは君がくれた権利だった

心の棘は今もう
何かを繋ぎ留めたりはしない
誰かを傷つけたりもしない
柔らかな瓶の中で
無茶苦茶にかき混ぜられて
時々その痛みを思い返すだけだ

匂いは街角にも
部屋の中にも溢れていて
すこし混乱はする
心のなかに棘があったような気がして
そしてそいつには
か細い糸が引っかかってたような気もした

切れそうな糸のことをいつも考えていた
それだけがここまで繋がっている
いつか切れてしまったその時のことを
思い出せない

892,800秒の距離
ぼくとその糸の向こうまで
ずっと歩くことを考えてた
その距離が現実的じゃなかったことがわかって
なぜ歩こうとしなかったのか
理由を探す夜がある

心にあった棘に
誰かが繋がってたとして
なぜ歩こうとしなかったのか
理由を探す夜がある



自由詩 892,800秒 Copyright 竜門勇気 2019-12-09 23:48:23
notebook Home 戻る