もっぷ

彼女とは幼馴染みで
産院のベッドまで隣り合っていた
あなたが産まれて その一秒後にわたし
、そんな感じの 二人はとても仲良しで
家庭の諸々もが似通っていたし
それがいまでは点の上にあなた
そこと繋がっていない点の上にわたしが居る
故郷東京のどこかの駅前通り界隈という地理
の上のカフェで向き合って
さっきまで偶然の再会をあんなにも
喜び合っていたのに もう
ふとした沈黙がぽつぽつと始まって
それでも二人ともにカフェを後にする、
友と「じゃあまた」、
そんな空気でもなかった
お互いのその後のことを
おおよそ披露する場面が終わり結果
もっともっと意気投合するか
逆に歳月というものをいやというくらいに
思い知り 再会を後悔するか

そういうふうではなくて
そのどちらでもなくって

少なくともわたしは
有名な会社に務めるご主人とお子さんは二人
住んでるところが世田谷区の一戸建てという
彼女のどこにも嫉妬心は起きず、
彼女がいまのわたしの境遇に
あれこれとめぐらす心を持っていないことも
経験上よくわかっていた。

でも この 未知のさびしさはなんだろう
かなしいときのなみだをともないたいような
この 曖昧な、感情はなんだろう

店の窓からは さっきまで凪いでいた存在が
翼を広げたようで
金木犀のよい香りが聴こえてきた




自由詩Copyright もっぷ 2019-12-08 19:42:34
notebook Home 戻る