足掻き
ミナト 螢

あとがきのような
夕方に残す
手紙の最後を
迷っているから
インクの匂いが
蜜柑と混ざり
便箋の端を
濡らしてしまう

瞳の色だ

嘘も言い訳も
全て包んで
濁りを煮立てて
円を崩した
私の影が
落ちる台所に
帰ってくるのは
猫だけなのかな

穴の開いた靴下を
縫うたびに
小さな爪が
引っ掻いて回す

閉じ込めるつもりの
部屋だったのに
出口を作った
あなたの心に
誰も通らない
近道がある

蜘蛛の巣みたいに
好きに歩いて


自由詩 足掻き Copyright ミナト 螢 2019-12-02 08:37:09
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