こんなの詩じゃねぇよ
こたきひろし
ある朝
父親と母親にむかって
二十歳過ぎた上の娘が言ってきた
お父さんとお母さん
夜中にうるさいよ
うるさくて眠れないよ
気になって眠れないよ
年頃の娘がいるんだから
いい加減やめてよ
二人ともいい年なんだからさ
聞きたくないよ
キモいよ
それを言われて
俺の時間は一瞬止まった
嫁の時間も同じくだったに違いない
何を言っているのか
直ぐにピンときた
止まった時間が再び動きだしても
何も言い返せなかった
そして俺は思い出した
長女がまだよちよち歩きしてた頃
夜
すっかり眠ったと安心していたら
いつの間にか起き出していた娘に
夫婦の秘め事を
不思議そうな目で見られてしまった事を
ああ
嫌だイヤだ
昨夜も
昨夜以前も
娘二人とも寝静まってから
無言劇のように始めたのに
だけど
下の娘は言ってくれてた
お父さんお母さん
ラブラブしても良いからね
って
その寛容さに戸惑いながらも
つい安心してしまっていたの
同じ我が子でも
長女は気丈でハキハキ自分の意思を口にした
けれど
次女はおとなしく控え目で、なかなか自分の意思を明確にできないでいた
とは言えど
長女にはっきりと言われてからは
私たち夫婦は
性行に封印をしない訳にはいかなくなってしまった
いかなくなってしまった