煙草
mmnkt

暖房の風に煙草のけむりが流されていく
白い有害物質はもう少し学力があれば
雲になれていたと言いたげに
その頼りない体を漂わせ
目には見えない色になっていった
けむりは部屋に残り壁や天井に付着して
人類への嫌がらせとして黄ばむか
そうでなければ快のない
ただ有害なけむりとして同僚の肺に入った
司令官は私だった
私が煙草を箱から出勤させ
ライターに命じ火を出させた
同じ部屋で煙草を吸っていることに
同僚は嫌な顔ひとつせず
スマホで美少女ゲームを楽しんでいる
同僚が正義の人でなくてよかった
しかし数年後か数十年後
同僚が肺がんにもしなったとき
ここぞとばかりに私を責めるかもしれない
そのときのためのロジックを
私はそのときまでに用意できるだろうか
少し気がかりである
窓の外には黄ばみのない世界があり
私の少年性を困惑させた


自由詩 煙草 Copyright mmnkt 2019-11-16 19:28:38
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