ノート(鳥)
木立 悟




不安げに緑を歩む鳩の目がふと振り返り鴉になるとき



手のなかの鳥の器に降る震えこぼれゆくままこぼれゆくまま



いつわりの光の模様の窓をゆく姿を持たない鳥たちの列



河口から空の底へと落ちてゆく水に映らぬ鳥のはばたき



ひとすじの光が鳥を描いている朝のこがねの届かぬ暗がり



木を鉄に鉄を木にする光へと鳥の器を置いてゆく午後



横たわる鳥の片目に鳥は居て空ゆく鳥を見つめつづける



もう誰も住まない家の隣にはにぎやかな声鳥を呼ぶ声







短歌 ノート(鳥) Copyright 木立 悟 2005-04-05 09:44:00
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