生温き
AB(なかほど)



生温き句捻らむかと風の夜

私達は私達の進むべき道を
そんなこと判ってるのに
判っているのにどうして
こんなにも無為に時を過ごすのだろう
また、それを慈しむかのように
それもひとつの道だと
気づいたふりをしながら



虫の聲拠所無く柿晒し

冷蔵庫の裏から聞こえてきた
それは探しても見つからず
そんなことさえも
あの夜達の拠りどころだったと
今は
もぐ人もいない実のように
風に乾いてゆく



是式と齒咋しばり向かふ冬

なんてことない
という君の

きえない



CRISPR接ぐ竹の春CAS9

私達は
新しい道具の使い方を知っている
知識の使い方を知っている
伝え方を知っている
かなしさを知っている
やさしさを知っている
そのことに気づかいないふりをしている
ことも知っている



是式と泣く児は居ねか越えて春

抱きしめるべきものを
抱きしめて
かなしみも
なんもかんも全部ひっくるめて
全部ひっくるめて
抱きしめて
抱きしめて
抱きしめて
生温い人生
と苦笑いでもできるのなら






自由詩 生温き Copyright AB(なかほど) 2019-10-17 08:13:57
notebook Home