沈黙と牛(改訂)
ひだかたけし

沈黙に座す
 死の腐臭を嗅ぎながら
沈黙に座す
 未知の芳香を浴びながら

ひたすらに
草を食む牛
只在りて

〈牛〉は無意味な滑稽だ、
のんびり泰然とそこに居て
私は食まれる草となり
その巨大な胃袋に
溶けていく溶けていく
今の今にうっとりと

)〈今〉は無意味な豊饒だ、
原初混沌の中から湧く

ウシッ!

静けさのうち沈黙あり
沈黙は黙々と移動しながら
静けさのうちに沈んでいく

沈黙に座す
 死の極限を見据えながら
沈黙に座す
 未知の開花に触れながら













自由詩 沈黙と牛(改訂) Copyright ひだかたけし 2019-10-15 20:32:52
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