夢見る観覧車
塔野夏子

そこは見わたすかぎりの平原
誰もいない
誰も来ない

その平原のまんなかに
円い緑の丘
そしてその上に観覧車
誰もいない
誰も来ない
のに
ただ静かに回り続けている

観覧車は
待っているのだ
いつか誰かが来て
乗ってくれるのを

誰かが来て
乗ったなら
観覧車は見せてくれるのだ
そのゴンドラの窓から
その人がいちばん見たかった景色を

今は
誰もいない
誰も来ない
けれど
観覧車は静かに回り続ける
いつか誰かが来て
窓から見える景色に
ゴンドラがひとめぐりするはかないひとときでも
うっとりと見とれることを
夢見て




自由詩 夢見る観覧車 Copyright 塔野夏子 2019-10-09 11:56:54
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