西の畑で
オイタル

西の畑で長靴を履いて
耕運機を回した
小型の テーラーっていうやつだ
なんでテーラーなんていうのか
ぼくは知らない
テーラーで
でこぼこの畑を行き来した

空は丸く
雲を塗り伸ばし
畑に鳥の声を降らせる

ロータリーに草が絡まり
耕運機がぶつくさ言う
言ってんじゃないよ ぶつくさ
言いながら絡まる草を
ぶつくさ取り除くちょうどその時に

山陰のホテルの十階のソファーで
だれかがすばやくキスをしてる
海端のホテルの一階のロビーで
だれかがぬるい茶を啜ってる
川沿いのホテルの地下倉庫で
だれかが古い配管を蹴飛ばしてる
風の強いホテルの陰の畑の隅で
だれかが赤いテーラーを回してる

そう思って
少しさみしくなる

ぼくは
白菜を植えようと思うのだが
白菜は僕に植えられて
どうだろう

そう思って
さみしくなる

畑の周りに人影はなく
ロータリーに絡んだ草を
放り投げるしゃがんだぼくの
指先が少しさみしい
ぼくの膝も少しさみしい形にたわむ
そのころに
雨が降り出し

空はゆっくりと分厚い風を動かしてる
低気圧が山の手前で口笛を吹いてやがる

自分の食う白菜を植えようと思って
ぼくは
一人ぼっちに
なってしまった


自由詩 西の畑で Copyright オイタル 2019-09-21 22:45:31
notebook Home 戻る