真弓の妖精
丘白月


秋の雨は恋に似て
明るく光るけれど
とても冷たく
別れの暦をめくるよう
赤い実はいつ開く
誰が待っている
誰が見てくれるだろう
背が伸びて
浴衣の丈も足りなくなって
覗く踝が細く見えて
真弓は赤い実を一つ握って
恋が起源の秋を三つ数え
好きな人には逢えないと知る
夢を見たとても長い夢を
朝方妖精がやって来て
更待月の実と夢を名づけた
花と同じ名前の真弓は
明日の晩には
平安京の見下ろす丘で
言い尽くせない和歌を
詠みあうだろう
長い夜を月の下で
少し大人の恋の詩を



自由詩 真弓の妖精 Copyright 丘白月 2019-09-19 18:06:36
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