青にやられて
新染因循


雨上がりの午後、この街の空は
どこまでも行けるように青かった
アスファルトの窪みでは水たまりが
信号のいらない雲の往来を映している

あそこに飛び込んでしまおうか
革靴なんか脱ぎ捨てて
それから街を出ていって
ガラクタ山の長靴を履いて

雲のあわいを天使と仰ごう
ちっぽけな傘を踊らせて
風の色をした切符を口に咥えて
満月の裏側でスキップしよう

わかっているのだ、本当は
たとえあの水飛沫と戯れようと
どれだけ綺麗に流れたように見えようと
それが青空という嘘であることは

明日なんか欲しくはないけれど
明日という響きはあまりにも青いから
まずは長靴を買いに行こう
それから照る照る坊主を吊るそう



自由詩 青にやられて Copyright 新染因循 2019-09-14 23:16:05
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