眠れないから本棚を見た
丘白月
眠れないから本棚を見た
背表紙が手招きする
私を手にとって下さい
そっと抜き取って下さい
その目で見つめて欲しいの
昨日買った本はテーブルで
自慢気な傍観者
でも本棚に席はない
きっと三日後には
あの本棚の一番上に横にされる
夜中に古びた紙たちが
虫の音を聴いている
私も耳を澄まして
夜の息を聞いている
眠れなくて嬉しくて
火照った気持ちが消えない
夜に入るのも夜から出るのも
みんな怖くて本から漏れる
呪文のようにカビ臭い
まるで私の姿のよう
朝日が東のずっと向こうで
月からバトンを待っている
寝息を詰めたバトン
詩をメモ書きした
書店の紙袋がベッドから落ちた