眠れないから本棚を見た
丘白月


眠れないから本棚を見た
背表紙が手招きする
私を手にとって下さい
そっと抜き取って下さい
その目で見つめて欲しいの

昨日買った本はテーブルで
自慢気な傍観者
でも本棚に席はない
きっと三日後には
あの本棚の一番上に横にされる

夜中に古びた紙たちが
虫の音を聴いている
私も耳を澄まして
夜の息を聞いている
眠れなくて嬉しくて

火照った気持ちが消えない
夜に入るのも夜から出るのも
みんな怖くて本から漏れる
呪文のようにカビ臭い
まるで私の姿のよう

朝日が東のずっと向こうで
月からバトンを待っている
寝息を詰めたバトン
詩をメモ書きした
書店の紙袋がベッドから落ちた


自由詩 眠れないから本棚を見た Copyright 丘白月 2019-09-04 05:23:40
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