クラゲに失礼
はだいろ

もし僕が、一人なら、結婚していなければ、
娘がいなければ、
もしも僕が今も独身だったら、
間違いなく、今年度いっぱいで、会社を辞めたと思う。
もう全く、いやになった。
だが、家族がいる。お金がいる。
だから、辞められない。
パーマンのコピーロボットにでもなったつもりで。
来年になっても、会社に通う・・・
潰れるか、クビになるまでは。


よく、AIが人間の仕事を奪う、とかいう文章を見るけれど、
それのどこが恐ろしいのか、全然わからない。
それでいい。
もはや、人間なんて、人間らしさにおいて、
AI以下がほとんどじゃないか。
人間らしさなんて、AIにコピーしてあげれば、
たいていの人間よりも、きっと人間らしいに違いないさ。


たぶん人間は、
天変地異か、核戦争か、
飢饉とか、疫病とかで、滅ぶのだろうと、
想像していたけれど、
どうやらそうではないように思える。
人間は、自分で、人間でいることから、離れていっている。
近頃、それがよく分かる、ような気がする。
人間は、今そうやって、滅んでいっている。


自分はそうじゃない、
自分はこうして特別だから、なんて、
いい気になっている僕だって、もう、いつの間にか、
骨もないクラゲのような物体になって鈍く発光している。
いやあ、
それじゃクラゲに失礼か・・・


いい映画、それを深く感じる。
いい小説、それを深く感じる。
いい音楽、それを深く感じる。
だから?
だから?
だから何?









自由詩 クラゲに失礼 Copyright はだいろ 2019-08-29 20:26:02
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