指先に沁みる脈拍
ふじりゅう

窓辺からうっすら広がる
砂利道けもの道は 僕の投影
幕のかかったレンズフレアは
誰も救う力を持たない
豊かな想像力が
本当の肉体を置き去りにしていた
たった今から君の無数のショットが
散り散りの灰に変わる

いちごを摘んで大切にしていたら
どうせ腐るのに
なお、歩き回ったら
出来損ないのシャーベットになる
君の小指に感じる
僅かな脈拍があれば生きていけただろうに
ふたり シャワーから飛び出した水
僕もたぶん どこかの誰かを
運命の人だとうそぶいていくだろう

モーターを手動でずっと回していた
それは電源のない、享受されない鉄の塊
急ぎすぎた蝿が羽を失い
無残な生き物の残骸になる
ぺちゃくちゃお話する君を
ひねり潰したいほどの愛が
凪に佇む船に差し込む
太平洋の南風

恐らく見知らぬ馬の骨に
運命の人だと嘘をつく仕草に
瞬きが加速するふたりの癖が
垣間見えるかもしれない
そこに 中央公園で受送信した
当時の鼓動は欠片もない
窓辺からうっすら広がる砂利の味を
知らないから只今から覚える
シャワーから別れた水滴の
徐々に そして加速度的に下がる水温を
間近に受信していた
ただ痛切に 受信していた


自由詩 指先に沁みる脈拍 Copyright ふじりゅう 2019-08-09 03:56:49
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