おどけた街の少女
ふじりゅう

小さな小雨が
おどけた街を照らす
水遊びが楽しげな少女は
明日 何処へ行く
点線をなぞって
普段は飽き飽きの
恋のものがたりを
本当は求めていて
しなびた漬物のように
老いていくのだろうか
再び手を振る涙が
群れになって襲う
その時また 天才の言葉を失う
ちっぽけな友情ばかり
肩にぶらさげながら

浮流する人間の恋の残骸を
拾い集めている
立ち上る声届かぬ有様を
ずっと見つめている

普段はミミズのように
あるいは糸引く蜘蛛のように
風に逆らう蝶を想うだけ
瓦の隙間から少しずつ
落ちて形作るキューピットで
見知らぬ仕草を拾いたいだけ

小さな小雨が
おどけた街を照らす
こんな日に傘もささずに
シャボン玉を贈る少女ひとりだち
砂利の詰まった靴で
軋む夕日を待ち望み
淀みを消そうとしているだけ
君は雨遊びを浴びていれば
それでよかったのに
それでも行くのかい
飴玉転がしながら
颯爽と自転車で
私の捨てた表現を
得たいだけの旅に

浮流する人間の恋の残骸を
拾い集めている
立ち上る声届かぬ有様を
ずっと見つめている


自由詩 おどけた街の少女 Copyright ふじりゅう 2019-08-05 03:25:36
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