幻の海
丘白月


夏が始まるよと
白い波をよけながら
ウミネコが鳴いている

小石を投げる私と
目が合うと振り返り
知らないふりをする

私は冷たい風の中で
冬に失くした
イヤリング探してる

見つからないと
わかってる

季節が過ぎて

あの日落とした
あなたの涙が
もう貝に変えている

あなたの声が
水平線から聴こえる
海の底で星が流れてる

海が作った風は
潮から生まれ
季節に香りをつける

私は見つける
あの時と同じ色をした
貝殻を一つ

あなたに渡すこともない
だけど命のかけら
耳に当てて鼓動を聞く




自由詩 幻の海 Copyright 丘白月 2019-07-22 21:22:17
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