登り来る機関車の力
立見春香

ドーナツを食べて
函館へ
とあるドーナツ屋さんは
くだらない公約を
守ってくれた

なんてラッキーな星の下の二人なんだ
そんな幸せもの二人は
そんな安易な旅で
糸くずみたいな些細ないさかいで
破滅的な大げんか

焼き尽くすみたいな悪口と
突き刺すような真実の毒を
浴びせかけられるだけ
浴びせかける夜

心の闇に飲まれてしまう限界を超え
全てが燃やされたあとの灰みたいに
真っ白になる

夜景なんて
そんなときでも潤む光が綺麗で
五稜郭で私の方が
やっぱり泣かされるんだ

ええいいわ
忘れてもいいわ
さっぱりきっぱり別れてあげる

心の中で機関車が
坂道をのぼる音が聞こえてくる

ガッシュ ガッシュ ガッシュ

これ以上傷つきたくない
別れてあげるわ
でもねそれでもあなたが悪いよ

もう間に合わない
今更ナニイッテモ戻らないから破滅なんだ

そんなことわかっていて
それでも最後に拾ってほしくて
機関車が
のぼりの坂道に使う力の真似で全力で走る

ガッシュ ガッシュ ガッシュ

これ以上は嫌われたくないから
別れてあげるね

でもあの記念日は忘れないでね







自由詩 登り来る機関車の力 Copyright 立見春香 2019-07-20 16:52:04
notebook Home 戻る