夏に幻惑されて
丘白月


君は照れ屋で僕は無口で
青空の下で鳥の歌をつかまえて
草の香りを聞いていた

二人言葉はなくても
一つの時間の中にいた

若く美しい葉の隙間に見える
空を丸く切取ったような月を
ひこうき雲が横切っていく

髭のようだねとぽつりと言った
笑う君の小さな手をとったとき

魔法がとけたように
君は月のように消えてしまった
バラの香りとぬくもりを残して

ここに来ればまた逢えるだろうか
君はほんとうにいたのだろうか

生まれたての夏の匂いがした
テントウムシが手のひらに降りて
僕の顔を見て飛んでいった


自由詩 夏に幻惑されて Copyright 丘白月 2019-07-14 21:07:31
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