仮縫い
丘白月


赤い糸で仮縫いされた想いは
たぶんジグザグになって
ゆっくりと遠回りして
あなたに向かっていく

蛍が宇宙の渚で
ゆらゆら揺れながら
天をめざして昇っている
星に生まれ変わりたいと願って

深く蒼い宇宙の蛍が
手をとりあって光る
滲む涙の中で美しい世界を見る
夜が終わらなくてもいいと思う

公園のベンチに猫が眠っている
月あかりの下で夢を見ている
待ちくたびれた恋人の夢を

夜の空は雲さえ眠っている
雨でぬれた恋人の夢を見ている
虹を待っても逢えない夢を

誰もが夢の中で仮縫いを解いている
妖精が光の糸を
蛍が宇宙で編んだ糸を
抱いて降りてくる

両思いの衣装に袖を通す
綺麗だねと
夜空が言った



自由詩 仮縫い Copyright 丘白月 2019-07-06 18:20:13
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