仮縫い
丘白月
赤い糸で仮縫いされた想いは
たぶんジグザグになって
ゆっくりと遠回りして
あなたに向かっていく
蛍が宇宙の渚で
ゆらゆら揺れながら
天をめざして昇っている
星に生まれ変わりたいと願って
深く蒼い宇宙の蛍が
手をとりあって光る
滲む涙の中で美しい世界を見る
夜が終わらなくてもいいと思う
公園のベンチに猫が眠っている
月あかりの下で夢を見ている
待ちくたびれた恋人の夢を
夜の空は雲さえ眠っている
雨でぬれた恋人の夢を見ている
虹を待っても逢えない夢を
誰もが夢の中で仮縫いを解いている
妖精が光の糸を
蛍が宇宙で編んだ糸を
抱いて降りてくる
両思いの衣装に袖を通す
綺麗だねと
夜空が言った