バス停 第6話
丘白月

「詩的連載ドラマ バス停」


大きなフロントガラスの向こう
月が照らす海が見える
絹の揺りかごのように
波が穏やかに白かった

久しぶりだね
この街にいるんだね

驚いた様子もなく
伊藤君は語りはじめた

この路って好きなんだ
いつもこの海に来てた
妻と出会ったのもここなんだ
砂浜でタイヤがスリップしてて
僕が押してあげて・・

なんだか素敵ね運命だったかも

私は運命の人じゃないってことね
そう思うと寂しかった

免許あるの?
車買わないでバスに乗ってよね

好きだった人は笑顔も変わらず
告白した夜と同じだった

私はまだ一人なんだよ
伊藤くんより素敵な人いなくて

そう言うと笑顔でバス停に降りた

今日は送ってくれてありがとう
ただで乗れて得したわ

お互いに笑って手を振った

バス停からの坂道が夜空に
遠い宇宙に続いていた

素敵な宇宙人でも降りて来い!
そう言って力強く歩いた



自由詩 バス停 第6話 Copyright 丘白月 2019-07-04 20:53:31
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