バス停 第5話
丘白月


私一人のせて
窓辺に月が一緒に走る

「どこでも止まりますから
声かけて下さい」

懐かしい声が
十年の時を超えて来た

少し前なら
このまま地球一周とか
時よ止まれとか思った

けれどもう
みんな大人で
それぞれの時間はバラバラに
シャボン玉のように飛んで
それでも割れるまで輝いて

カーブを曲がると海が広がった
灯台の灯りが回転する
砂浜に寄せる波が白く見えた

「あの・・・すいません
次のバス停で停めて下さい」

「あの・・・伊藤くんでしょ、
私・・・横山です・・・
覚えていないと思うけど
高校が一緒で・・・」

バスがゆっくりと
海岸線に停まった
夏の星座が水平線を昇り始める

言葉がゆっくりと生まれる





自由詩 バス停 第5話 Copyright 丘白月 2019-07-03 20:47:10
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