バス停 第5話
丘白月
私一人のせて
窓辺に月が一緒に走る
「どこでも止まりますから
声かけて下さい」
懐かしい声が
十年の時を超えて来た
少し前なら
このまま地球一周とか
時よ止まれとか思った
けれどもう
みんな大人で
それぞれの時間はバラバラに
シャボン玉のように飛んで
それでも割れるまで輝いて
カーブを曲がると海が広がった
灯台の灯りが回転する
砂浜に寄せる波が白く見えた
「あの・・・すいません
次のバス停で停めて下さい」
「あの・・・伊藤くんでしょ、
私・・・横山です・・・
覚えていないと思うけど
高校が一緒で・・・」
バスがゆっくりと
海岸線に停まった
夏の星座が水平線を昇り始める
言葉がゆっくりと生まれる