バス停 第4話
丘白月
潮風が吹き抜けていく
春と夏が混じっているような
残業して街路樹を見ていたら
すっかり薄暗く
黄昏は西の国へ帰り
妖精が街灯を点けていく
帰りのバスを待ちながら
さっきまでいた
部屋の明かりを見る
あの人はきっと
伊藤くんの奥様
私とは違うタイプ
もう過去のこと
なのに泣けてくる
次のバス停まで歩こうかな
まだ時間あるし
バスの窓から見ていた
あの素敵な雑貨屋さんにも
美味しそうなパン屋さんにも
「きゃあ!痛ったい~」
砂利道で倒れ込んだ
ダメだわこの靴じゃ
明日からペッタンコの靴ね
ゆっくり立ち上がると
後ろから来た大きな光に包まれた
振り返るとバスだった
え?どうして止まるの
行き先は「回送」だった
ドアが開いて中から声がした
大丈夫ですか?
良かったら乗ってもいいですよ
こっちの方向でよければ
伊藤くんだ・・・