切ること そして忘れること
オイタル

爪を切る 紙の上に そして
私の指の折れ具合を見る

指を見て
いろいろを忘れる

髪を切る少し前 私は 襟足を
気にした

お前に渡したうす茶色い紙を
忘れた あの 例のペーパー

指を切る
忘れるはずの 明日の約束

手を切る
その事を忘れて笑う 笑い合う

笑うことを また
忘れる

肩を切る
そうして歩く 子供を邪魔にして

大切な名前を忘れる
車のシートに

腰を切る
私はそれを自慢する 忘れるくせに

積み重なったたくさんの紙を繰る
重なりの中に 我を忘れる

忘れた指が空を切る
風を切る

首を切って 目を切って
私はどこまでが 私であるか

私は
私であることを忘れて

一枚のうす青い紙となって
そこに廃れてあった


自由詩 切ること そして忘れること Copyright オイタル 2019-07-02 05:19:29
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