悲しみの絵の具で描くたそがれ
秋葉竹



あの犬の鳴き声が哀しみをいや増して
どの街まで逃げても逃げられないような
死にたいって感情が邪魔で吠えられない夜なら
白々と明ける朝をそのまま凍って待つつもりさ

空白の静けさが体じゅうに染み込んでいて
嘘ばかりつく弱い言い訳ももういいやって
消滅の儚さが喉の奥まで流れ込んでいて
夜ばかり好きな孤独な優しさももういいやって

みんなの暖かさが邪魔になるならもう
死ぬことを見つめた夜の切なさをもう
棄ててしまえばあの犬を呼ぶ声の必死さをもう
忘れて生きることを交わす約束の棘が痛くなる

あの犬が吠え街中で浴びせかけられる怒声は
心の隙間に錆びた鉄の匂いを漂わせるから
茜色の美しさは悲しみを絵の具にして
描き出す心のたそがれなんだって知っているよ





自由詩 悲しみの絵の具で描くたそがれ Copyright 秋葉竹 2019-05-30 22:19:44
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