オウト・ロック!!
ふじりゅう

老練さを思わせる道がある
枯葉や 桜の花びらや
皆が道に捨てていく 空き缶や言葉に出来ない音が
この見事な景観の礎となっていると思うと
一歩一歩を踏みしめる度に
新たな歴史を刻んでいる気分に浸れるんだ

入り組んだ思考へ 堆積した言葉に
潰されながら帰宅する
カーテンが閉じられ夕闇もまともに届かない
テーブルに、ポツンと置かれた小さなパン
付箋にか弱そうな字 「ごめんね」

お腹はぐうぐう鳴ってはいるものの
余りに固いパン半分で何故か空腹が満たされた
ごちそうさまも言わずに
自室へ引き篭る
毎日飽きもせず訪れる 明日までの余白を
余りに純粋なラブ・ソングで埋めていく
余りに単純なラブ・ソングで埋めていく
思考停止しながら ラブ・ソングを聞き入っている
ラブ・ソングで僕が埋められていく

だだ漏れの感情が胃を締めつける
もし教室の君が人質にでもなれば
危険を顧みずヤツに飛び込んでいって
様々なパターンで殺されてしまおう
僅かな命の灯火が消される前に
君に辞世の句を解き放とう
夜中グッタリしたママが玄関を開けて来て
はっと我に返ってしまった

夜の帳が降りた自室のテーブルに
子供の頃刻んだキズがあった
その間には黒い埃が固まっている
この部屋も昔 誰かがきっと
憩いの場としていた筈だ
思うがままにペンを走らせる
山積みのドラマチックなシナリオ
その根底にはこっそり買ってしまった
旧型のウォークマンから流れるメロディがあった

君にしがみつく僕が往く

時計が猛スピードで時間を進めて
君の牛乳ビンの飲み口にひたすら欲情した
だだ漏れの感情が暴発しそうだった
教室のタイルは こどもたちの血反吐の様な生活で汚れ 荒んでいる
クラスのトップを張る えずい彼が何か叫べば
徐にノートを取り出し 忙しいフリをする
開け放しの窓から吹き出す風が カーテンを化け物のようにうねらす
時計が猛スピードで時間を進める
入り組んだ思考に言葉が詰まる
話しかけてくれない君を無視してやり
足早に地獄を脱したら
老練さを思わせる見事な景色に圧倒され
僕の空白の時間を、また
真っ白なピースが、パチッ と埋める

甘く愛おしいラブ・ソング
儚く切ないラブ・ソング
イヤホンから流れるメロディ群が
僕の余白を色っぽく染める
誰かの囁きを思い出した
ヒソヒソ話を思い出した
僕の泣き声が聞こえた
こっそり ママに暴かれないように
嘔吐いていた

老練な道塗が語る
一度朽木になれと
両手を重ね下校する君とえずし彼に
贈るラブ・ソングを知る由もなし

山盛りのシナリオ ドラマを破り千切り
震える手で握ったROCKのCD
初めてイヤホンから ROCKが絶叫された
詰まり切った言葉を
捻り出した己の音へ放出する
ゴミ箱に山積みの愛のシナリオ
僕の空白のピースが初めて
枯れ落ち 腐敗した 色になる
僕の余白が
僕の部屋が
眩しいほどの暁に染まる

老練さを思わせる道は
朽木があり 桜の花びらが舞い
皆の取捨選択の礎の景観だ
新しい小さな歴史を刻んだ卒業生が
舞い落ちる桜の海へ失せて行く
僕も二度と 老練なこの道へ
足を踏み入れる事は無いだろう
死んだ母の意思を継ぎ、空白は労働へ様変わりし
腐った土壌から芽が吹くように
若やかな生への欲求が湧く
僕の余白は、ROCKで埋めた
己のROCKを書きなぐった
嘔吐のように まるで嘔吐のように書く
詰まり切った言葉が
オリジナルメロディとして抜けていく
死ぬ程切り詰めて堂々と買った このアコギでは
ROCKなんか弾けやしないだろうが
まだ君にしがみつかんとする僕は
ROCKのつもりで掻き鳴らす
指が千切れるほどROCKを奏でる
脳が腐るほどROCKを絶叫する
駅の喧騒の前で くたびれた道端で 噴水をバックにして
ROCKの如く掻き鳴らす
僕を吐き出す感触がある

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僅かな命で辞世の句を
バカな息子と笑っているであろう母と
しがみつかんとした かつての君へ
私はネット上で
純粋なラブ・ソングをリリースしていた初期が良かった
と罵倒されているが
無けなしのお金で贈ったパンを
半分も残してしまったバカ息子だから
稼いだお金を貯め 母の墓標へと捧ぐ
ROCKを奏で続けている ごめんね
ROCKを絶叫する ごめんね
君にしがみつく大バカのままさ
ROCKを弾き続けていく
「僕」を吐き出す 感触があるんだ
かつて溜めた言葉を、オリジナルメロディに変え
嘔吐のように まるで嘔吐のようにROCKを歌う
指が千切れるまで
脳が腐り落ちるまで
私が人を 愛せなくなるまで


自由詩 オウト・ロック!! Copyright ふじりゅう 2019-05-27 02:39:50
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