【 壁の歪み 】
豊嶋祐匠

  
  
  私を愛した、父よ母よ。
  
  
  私の価値は、全て
  アナタ達の価値に、等しく在りました。
  
  私の幸せは、常に
  アナタ達の許しの中で、果たされ
  
  私の怒りは、けして
  アナタ達の怒りの代わりには成れず
  
  私の喜びは、すなわち
  アナタ達を裏切る事に、値して来ました。
  
  
  私の笑顔は、いつも
  アナタ達を侮辱するものでしかなく
  
  私の苦しみだけが
  アナタ達を繋ぐ、唯一の方法だったのです。
  
  
  私の部屋に残る、深く蹴られた壁の歪み。
  
  
  その歪みの意味を
  気づけなかった、私も
  
  今なら涙が
  壁に染み入るほど、解るのです。
  
  
  それは、アナタ達に
  隠し通した無表情な私。
  
  その私の
  怒りと反抗の証、そのものであり
  
  アナタ達に
  見せられなかった私なりの
  
  本当の愛の、激しさの表れだったのです。
  
  
  
  
  
  
初作 2005.3.9
  


自由詩 【 壁の歪み 】 Copyright 豊嶋祐匠 2019-05-26 06:32:34
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