魅了の手順
竜門勇気

世界の終わりみたいに酒のんで寝てます
いつでも電話してください
長い休みをもらったのでありとあらゆる友人に
メッセージを送った
もう少しでセミが地べたから湧いて出る

君らはなにか勘違いをしてる
痛みはないよ くすぐったくもない
想像してるだけ
悲しそうに見えてるのか?
辛そうに見えてるのか?
俺は腹を立ててるんだよ
この病はもう君らの手を離れた
でかく切るハメになる

三日経つ
四日経つ
終わりなんてないことが
この頃ようやく分かりだす
肋骨の裏で何かが破れかけてる
背骨の真ん中で何かが壊れてる
かわいそうに 薬指を唇に当てて
約束は混ざりけのある不潔に成り下がる
なんて切ない終わりの童話
動物も 雲も 喋ってしまいました
嘘をつかない者たちが
口を開いて
鋭く尖った刃を地べたに吐き落としました
あまりにも切っ先が尖っていたので
星を抜けて行きました
嘘をつかない者たちは
涙をぽとぽと垂らしました
乾いた土に丸い跡
乾いた石に丸い跡

十日経っても終わらない
誰が壊したんだ
俺か
吐いた後はまた酒を飲む
耳と耳の間に亀裂が入る音がちゃんと聞こえる
その痛みが来る前にまた酒を飲む
かわいそうに
慌てて飛び出した部屋の外で
黄色い水をどっさり吐き散らかした
乾いた土に丸い跡
乾いた石に丸い跡
嘘を忘れたけだものは
濡れた舌を突き出して
さらさらの唾をいつまでも落としました

そろそろだよ
何もかも穿く刃が帰ってくる
眼球の寸前に刃があらわれた
だけどそこで
位置エネルギーを使い果たして
再び星が飲み込んでしまった
こうやって俺は無数の刃を
重力の壺の中に投げ込んだ
明日で休日は終わる
また庭で俺は吐いている
死ねやしねえ
でもあれだ
”夢をもつことはいけないことですかね?”ってやつさ
嘘を忘れたけだものは
自分すらも騙せないのさ
こうやって
自分を魅了してやらないと
生きていくことなんて
生きていくことなんて
忘れられない


自由詩 魅了の手順 Copyright 竜門勇気 2019-05-08 02:37:45
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