挽歌
葉leaf


         --S.T.へ

ここが君の生まれた町で、ここに君の悲しみは埋まっている。太陽の季節、君は夜の闇の中をさまよい、漆黒の季節、君はより深い黒を求めてさらに奥へと下って行った。引き金を引いた犯人は社会に紛れ込み、代わりに傷を負った君が同時に罪も背負った。ここが君の生まれた町で、ここで君の審判が行われた。
君の敗北はいつでも美しかった。そこには必ず血が通い、純朴さと誠実さが宿っていた。君の敗北はいつでも倫理的に正しかった。君はあらゆるものと戦闘していて、敗北は五月雨のように続いた。君はいつでも武器を持たずに、たださまようものとしてさまよいが果てると同時に敗北した。そして敗北はいつでも輝かしかった。
底のない川に沈んでいくことが人生だとすれば、君をさらっていった川は今でも僕のすぐ脇を流れている。君がうずもれていく川に僕は何度も手を差し入れ足を踏み入れた。だが僕には僕の川があり、僕が沈み込んでいく川の行き先はまったく違った国土に属していた。僕と君とは人生の国籍が異なっていた。
君の人生を比喩することは完全に無効であるが、だからこそ君の人生は比喩でしか語れない。君は審判に敗北して、人生の川を無限に落ちていった。君の生まれた町は唯一ここしかない、そして君の刻んだ悲しみは僕を絶えず糾問してやまない。君の生まれた町で僕は君の敗北にいつまでも復讐し続けなければならない。


自由詩 挽歌 Copyright 葉leaf 2019-04-29 17:27:35
notebook Home 戻る  過去 未来