幸せな人生
邦秋

溢れ出る感情が、心のキャパシティを超えそうになったとき、

言葉を綴ることで僕は僕をコントロールしている。



そして、その感情は、幸せや楽しさというよりは、

怒りや絶望といった類のものの場合が多い。



だから、安寧な日々の中では作品が湧いてくることが少なく、

詩や詞が生み出されるときと、

心の状態が良くないときとは、ほぼ同義だ。



-「憂い」に「死」を足すと「うれしい」になる



かつて、そんな発明をしたこともあったが、

独立した作品として世に出すには抵抗があった。



言葉を通じて日常の僕への心配を招きたくないからだ。



怒りや絶望を燃料にして筆をとったとして、

それを対象や周囲に直接ぶつけないために

感情を包装紙で綺麗に包み込む。



ラッピングをした言葉で周囲に心配を与えるようでは

丁寧に表現を選ぶ努力が無駄になるからだ。


しばらく、有難いことに作品を生み出す泉が枯れていたのだが、

お蔭様でここ数日は順調に筆が進んでいる。



その中で、作りたてのメロディに載せる言葉を選ぶプロセスを楽しむことで

僕は、僕の怒りの感情を薄めていく。



それだけで穏やかな日常に帰ってこれるから、

僕は幸せな人生を送れていると思う。


自由詩 幸せな人生 Copyright 邦秋 2019-04-21 15:57:45
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