緑色の錠剤
塔野夏子

その場所には五人の詩人がいた 皆その瞳に
あやしげな緑色の光を宿していた とある緑
色の錠剤を飲むとそれが効いているあいだは
瞳がそんな風に光るらしかった そしてとて
もいい詩が書けるらしかった そのうちの一
人が私に云った 君はこの錠剤を飲まずとも
いくらかは私たちの世界に感応できる能力が
あるようだ だがこれを飲めばさらにすばら
しいものを書くだろう 私は今は疲れている
から今度にしますと云ってその場所をあとに
した 私は自分がもうその場所を再び訪れる
ことはないと知っていた




自由詩 緑色の錠剤 Copyright 塔野夏子 2019-03-29 10:55:51
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