春の花の夢見
秋葉竹


船はいつものように鎖でつながれるだろう

青い月あかりが尖った夜の冷たさで
恋人たちを未来へと追い立てるだろう

ビルの上を飛ぶアホウドリの
啼き声がなにを求めているのか
大空を見上げて待ちわびる自由の民には
悲しすぎてなにもわからないだろう

桜の木の下で
うっすら疲労の表情を浮かべる
戦い終えた戦士の夜に
翼なきものの真実の心と
その心の休息を取るふたりの玉響(たまゆら)
魂の半身を見つけ合ったものたちの
すべての覚悟が語られる夜が来るだろう

神様への祈りをそっと
小さな御守りを両手でくるみ
唱える定めのときを知るならば
空のポケットに満たされた
宙ぶらりんの虚栄心のなかみを知り
暖かな花見の帰り道に
狂おしい異国の砂漠の砂嵐を幻視するだろう

そしてそれよりも
世界の外に夥しい冷たい風が吹く光景を
今日もふたたび夢見る夜になるだろう








自由詩 春の花の夢見 Copyright 秋葉竹 2019-03-26 00:20:23
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