月の風船
立見春香

月が浮かんでいるのを
私はジ~ッと
見上げ続けていた

月が、ふわわわ、と
ほんとうの意味なんて知らないけど
あたたかい人のモノマネをして
ふわわわ、と微笑んでいるのを
私は
私のいちばんやわらかい
《無垢無垢な》こころを隠し込んで
両手を背中のほうで組んで
(手も出せない、の寓意かな?)
(こころのなかで)
指を咥えて、
涙目になりながら、
ただ、欲しいよぉ、欲しいよぉ、って
馬鹿みたいに望んでいたんだ


月が、ふわわわ、と、ふわわわ、と、
なんの悲しみもない世界を
偽装してでもいい
ただよっているのを
ほんとうにみることさえできたなら

私は、
自由にどこだって飛べると思うんだ
なぜ、って?
だって、
この、私の
その、いちばんの《無垢無垢な》こころを
こんどこそ
その人に差し上げるんだから
どんな
汚れ果てる悲しみがそのさきに
待っているのだとしても、
私だって、夢だってみる


私だって、飛びたいって祈る。


飛びたいって、声に出したって
いいはずだよね、きっと

騙されるんだとしても
駄目なことだとしても
だって、それくらい
心のなかで手を合わせて
みんなに
ごめんなさい、世界、って言うから
それから世界に
ちゃんと排斥される準備はあるから





自由詩 月の風船 Copyright 立見春香 2019-03-22 00:23:39
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