森を往く午後
大覚アキラ

捨てられて歩く午後
日陰のない歩道には
誰かが乗り捨てた自転車が
撃ち殺された牡鹿のように
無残に横たわっていて
捨てられたおれと
捨てられた自転車を結ぶ
透明な線の上を
巧みに跨いでいく人々は
それが約束事であるかのように
みな右肩に猟銃を背負っていて
黙々と獲物を求めて往く
おれの頭の中には
暗くなるまでに
眠る場所を見つけること
それだけしかなく
弔いの言葉のかわりに
倒れた自転車を眼に灼き付けて
また足早に歩き出す


自由詩 森を往く午後 Copyright 大覚アキラ 2005-03-30 01:31:54
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