君の在る情景
塔野夏子



いちばん繊細な季節が
君の心をうす青くゆらめかす
君は君自身の内部へ
幾重にも囁く ひそやかに震える叙情詩を
季節の弦と鍵盤とが
君の想いを奏でるままに
銀のきらめきを 彼方へと走らす
幼い日 君をふしぎに惹きつけた
ものうげな美しいひとのいる方へと――




君はひとつの神話を識る
それは君を創りだしたものでもあり
君の内から湧きあがったものでもある
それは今 誇り高い叙事詩として
あふれ出す 踊る君の肢体を
語り部として 力強くうねってゆく
踊る君の肢体から マントのよう翻るのは
君の始源へのあざやかな追憶と
そして君を曳いてゆく 狂おしい憧れと

君は踊りゆく 語られる君と
語る君とを ひとつに結びあわせながら
力強く まだ見ぬ果てへ まだ知らぬ頂へと




自由詩 君の在る情景 Copyright 塔野夏子 2019-03-17 12:21:54
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