新宿駅・午前〇時
服部 剛

鼠が地面に落ちた
餌を食べる 午前〇時の新宿

家の無いおじさんは
幸せそうな笑みを浮かべ
北風に凍える僕の傍らを通り過ぎ
バケツの残飯を探す臭覚のままに
繁華街の路地へと
消えていった

終電の時刻も近い
駅前を行き交う人々の間に
突っ立っているサラリーマンが
踵で煙草の火を潰してる

僕がこの街で
ずっと探しているものは
一体、何だろう


  * * *


日付の変わる前、僕は
「無人島で無尽蔵」という
新たなライブの司会をしていた

先陣を切った阿部ちゃんは
軽快なタップを打ち鳴らし
目には見えないメッセージを語り

茨城から駆けつけた白犬さんは
血の滲む傷口さえも、力に変えて
――飛べ ――飛べ と唸り

流浪の旅人sho君は
ろくでなしの居場所の唄を
弾き語る

新たな日々を決意して
山梨へ往くユウコちゃんは
朝に旅立ったお婆ちゃんへの
思いを胸に仕舞い
素朴な風景に宿る
言葉の宇宙を、呟いた

皆で織り成した
音と言葉のひとときは
昨日の夢となり

今夜は無性に目が冴えて
眠れそうにないから
マフラーを巻き直して
夜明けの方角へ
深夜の道をそぞろ歩こう

すでに始まっている
物語の鼓動と
靴音の響くままに  






自由詩 新宿駅・午前〇時 Copyright 服部 剛 2019-03-05 23:56:01
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