魔法瓶
あおいみつる
電子ポットのお湯でコーヒーを淹れる
暖色系の照明に照らされた部屋
木目調の長テーブルと椅子の上で
三毛猫とプードルが遊んでいる
遠い南の島から流れ着いたヤシの実が
潮の香りを運んでくる
トイレの隅には八丈宝貝がころがり
薪ストーブが暖かい
本棚には洋書が並び
壁にイエスキリストの肖像画が掛けてある
レトロなテレビの脇には虎の尾の鉢植えがあり
マイナスイオンらしきものを放っている
南の窓から太平洋が一望でき
夕日が水平線に滲み沈んでいった
ぼんやりと妄想と空想を繰り返すと
絶望のような孤独と後悔と貪欲が溢れる
それが電子ポットの無限の湯(妄想)なのかもしれない
今夜も電子ポットから無限の妄想を注ぐ
私は愛のない海で溺れかかっている