書き留める日々
Seia
ほどけてしまいそうな雲の流れに
交差した飛行機雲は
本体に遅れながら
それ自体が進んでいく
音楽プレイヤーを
ランダム再生にした意味のない
スキップに次ぐスキップ
今日は相性がわるいみたいで
すこしでも油断すると
最短距離で真面目なことを
言ってしまいそうになるから
原付のシートに付いた
砂を塗料とする肉球の痕跡とか
干し梅を二個買っただけの
レシートの物足りなさとか
今思い出しておかないと
一生記憶に残らないような出来事を
やわらかい布で大事にくるんだ
自己嫌悪というやつは
知らない間に
玄関を開け
階段を登り
袋入りラーメンを煮ている
わたしの背中に覆いかぶさろうとする
鈍く鋭い音がして
鏡を割ってしまったことに気づく
新しいものを買えばいい
そうやって何度
取替可能なアイテムを捨ててきたのか
いまだに身体の動かし方がわからないから
常にどこかしらかに
生傷をたくわえている
最新リリースは左手人差し指第一関節
いきていくために詩をかいても
詩のために生活しているような気がして
メモばかり増えていく
さっきみた夢のはなしを紫のラベルに
眼の前で起きたことを白のラベルに
作った料理のレシピを緑のラベルに
浮かんだ一行の詩を白のラベルに
ストーリーラインのない
ストーリーが現実にはあって
机の上にばらまかれた
写真の真ん中に一枚一枚
糸を通した針を刺していく
作業を日々というなら
ぷくりとふくらんだ
ちいさな血のかたまりを
くしゃくしゃのハンカチで拭き取った