ミラノ風ドリア八景~あるファミレス店員の独り言~
梓ゆい

「私は洋食が好きなの。」と言って
いつもミラノ風ドリアを頼む90歳の祖母
性格もシビアだが
財布の中身に関してはことさらにシビア。

死にかけた親父にミラノ風ドリアを食わせると
やり残したことへの未練で生き返る。

いつもと同じ時間に来店し
いつもと同じ席で新聞を広げ
ドリンクバーとミラノ風ドリアで一息つくサラリーマン。
ホワイトソースの下のサフランライスが少ないと
店員を呼んできつく叱り飛ばす。

ミラノ風ドリアをアフリカ大陸に持ち込むと
それを自国で作りたくて民族紛争が勃発する。

彼女と仲直りをしたくてミラノ風ドリアを差し出すと
安いか?/おいしいか?のどちらかで
時には更なる争いごとが起こる。

ミラノ風ドリアの裏番長は
ドリアの皿に焦げ付いたホワイトソースとチーズ。

ミラノ風ドリアは
生まれ落ちた瞬間からイタリアに憧れている。

ミラノ風ドリアが見ているのは
「おいしい!!」の先にある人類の希望。


自由詩 ミラノ風ドリア八景~あるファミレス店員の独り言~ Copyright 梓ゆい 2018-12-24 01:36:00
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