アマメ庵

昼も夜も、夜も昼も、サバンナで走り回ったのははるか昔だ。
誰よりも早く駆け、獰猛で、向かって何でもかんでも噛み付いた。
誰も逆らわず、有頂天で、自分勝手だった。

歳月が経ち、一本、また一本と牙が欠けた。
あるいは抜け落ちた。
脚はまだ衰えないけれど、追うことよりも逃げることが多くなった。
弱くなった。
すると、家族が増えて、もっと弱くなった。

暖かく、乾いた風が強く吹く。
あの頃を思い出す。
失った牙のあとが疼く。
叫びたい。
痛みを、粘っこい唾液とともに、ゴクリと飲み込む。
弱くなった自分のために。


自由詩Copyright アマメ庵 2018-12-21 13:52:05
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