夢の傷
秋葉竹

青い雨が
灰色の空から降り落ちる
夢の中
白百合の頭部が
ポツリと
落ちる

小さな三角形の帆を張った胸が
なみだの波紋で揺れている
だれにもしあわせを
届けてあげられないので
すべてを諦めた人生だったからだ

ユニコーンは
乙女のやさしさを持っているので
私にささやいてくれる花ことばは
夢の傷を癒してくれるし
暖かい風を吹かせて
深い夜の天国へいざなってくれる

この部屋にはたにんは入れない
あの諦めきれなかった哀しげな笑顔を
わかってくれたひとの
素直さでも駄目かもしれない

ぬくもりを棄てて傷つき
消えてゆく生活に怯える

口をあけて過去を忘れようとする
いじましさがみっともなくて

立ち止まったうっすらと汚れた魂を
なんとかなだめすかして
転がそうとするけれど
そのうち諦めてしまうのだろう

いつのまにか?

なぜ哀しげなひとつ星は
だれとも目も合わせずに
その行く先を
ほの光る異界の海へと
決めているのだろう

やさしい夜の雨が降る海

夢の傷のような私の瞳孔を
切って
つき刺して




自由詩 夢の傷 Copyright 秋葉竹 2018-12-18 23:54:54
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