鎖の歌
秋葉竹

                    


金砂銀砂の歌の粉が
この部屋の
温もりのなかを踊り舞う

聴きたい人々には、聴こえるだろう

闘いを放棄したため
笑顔を痙攣らせながら
ドアノブをジッと見る
人たちもいる

フローリングに寝っ転がって、
冷めきった希望のページを読む
人たちもいる

信じられない嘘が
君にバレてしまうまえに
ひとりぼっちの夢を描こう

怖い、訳ではない、といおう
なにも、怖れないで、前をみている、と

隣の街には、雪が降る
白い花咲く、白い朝
氷をかじり、噛み砕く
忘れられない、夢と恋

その部屋は、人の心より冷え切っていて
入った瞬間は、寒いと感じるくらいの暗黒の空間

世界は、まだ、それほど安穏としているから
みんな、ひそめずに、息をしていられるだろう

その消えてゆくさすらいの歌は
すべてを慰めるこの部屋にも舞い降り
聴きたい心を隠す人の耳にも
そっと聴こえるような浪漫があるだろう

もう、その歌を忘れたい者たちの耳にも
しっとり濡れるように、聴こえてくるだろう

心の扉を開ける歌声は、
清々しい情熱の響きにも似て
聴く人の心を奪い、
忘れられなくさせるだろう

隣の街には雪が降り
凍りつく日常が戻って来ているのだろう

だから、人はこの部屋から
出られない心の闇に魅せられているのだろう






自由詩 鎖の歌 Copyright 秋葉竹 2018-12-16 18:22:22
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